モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 翌朝。相変わらずピピは具合が悪そうにぐったりしている。

「いったい、なにが起きているのかしらね」

 いつも明るく滅多に動じない母が、浮かない顔でピピの様子をうかがっていた。

 昨夜、父と兄は帰宅しなかったが、代わりに父の側近が戻り状況の説明をしたため、母もだいたいの事情を把握している。
「もし神木が枯れ果ててしまったら、ピピは消えてしまうのでしょうか」
「理屈としてはそうね。精霊は、神木がなかったらこちらの世界に来られないのだから。でもそんなことにならないようにお父様とランもがんばってるわ。信じて待ちましょう」
「でも、なにもせず待ってるだけなのはつらいです」

 自分にも出来ることはないのか。ベアトリスは居ても立ってもいられない気持ちになる。

 母はそんなベアトリスをなだめるように表情を和らげた。

「その気持ちはわからないでもないけど、トリスちゃんはここにいないとだめよ。そうでなければお父様たちが安心して務めを果たせないわ」
「……はい」

 ベアトリスとて母の言うことはわかっている。神木についての知識が少なく、身を守る術もない自分が出ていっても足手まといになるだけだろう。自己満足で動いても家族の迷惑になるだけだ。

『君は俺にとって大切な人だ。この手で守りたいと思うのは当然だろう?』

 ふいに昨日聞いたユリアンの言葉を思い出した。
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