モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
近づくにつれてツェザールの顔がよくみえる。その瞳にはあきらかにいら立ちが宿っており、彼がいまだベアトリスを嫌悪していることが察せられた。
「お待たせいたしました」
ベアトリスが緊張を覚えたとき、知らせを受けた母がやって来た。母はツェザールを視界に入れると、怪訝そうにわずかに首をかしげる。
「王宮からの使者と聞いたのだけれど」
ツェザールはベアトリスと対峙していたときとは別人のように、礼儀正しく公爵夫人に敬意を示しその場で膝をつく。彼の部下と思われる三人の騎士も同様にひざまずいた。
「第一騎士団所属ツェザール・キルステンと申します。先触れもなく訪問した無礼をお許しください」
「あなたは王太子の側近ね。今は平時ではないから仕方ないわ」
「ご理解いただき恐縮です」
体の前で腕を組んだ母は、鷹揚にうなずく。
「それでどのような用件なのかしら」
「はい。王太子殿下のご命令でクロイツァー公爵令嬢をお迎えに上がりました」
「娘を?」
母の表情が陰る。どうやら気に入らない状況のようだ。
「王太子殿下は娘にどのような用があるのかしら」
通常なら王太子から召喚されたら、取る物も取りあえず馬車に乗り込まなくてはならない。しかしクロイツァー公爵家には、異議を申し立てる権力がある。といっても日頃からいちいち文句を言ったりはしない。比較的穏やかなのがクロイツァー公爵家の人々なのだ。
「お待たせいたしました」
ベアトリスが緊張を覚えたとき、知らせを受けた母がやって来た。母はツェザールを視界に入れると、怪訝そうにわずかに首をかしげる。
「王宮からの使者と聞いたのだけれど」
ツェザールはベアトリスと対峙していたときとは別人のように、礼儀正しく公爵夫人に敬意を示しその場で膝をつく。彼の部下と思われる三人の騎士も同様にひざまずいた。
「第一騎士団所属ツェザール・キルステンと申します。先触れもなく訪問した無礼をお許しください」
「あなたは王太子の側近ね。今は平時ではないから仕方ないわ」
「ご理解いただき恐縮です」
体の前で腕を組んだ母は、鷹揚にうなずく。
「それでどのような用件なのかしら」
「はい。王太子殿下のご命令でクロイツァー公爵令嬢をお迎えに上がりました」
「娘を?」
母の表情が陰る。どうやら気に入らない状況のようだ。
「王太子殿下は娘にどのような用があるのかしら」
通常なら王太子から召喚されたら、取る物も取りあえず馬車に乗り込まなくてはならない。しかしクロイツァー公爵家には、異議を申し立てる権力がある。といっても日頃からいちいち文句を言ったりはしない。比較的穏やかなのがクロイツァー公爵家の人々なのだ。