モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい

 迎えの馬車にはベアトリスのほかにツェザールが乗った。

 閉ざされた空間に彼とふたりきりなのは気が重いが仕方がない。

 レオたち公爵家の護衛が馬車の周りを馬で並走してくれているので、危険な目に遭う心配はないだろう。

(あまり構えすぎない方がいいわ)

 びくびくしてばかりでは、ツェザールも気分が悪いだろう。それにいくら彼がベアトリスを嫌っていたとしても、ユリアンの側近なのだ。深刻な危害を加えられることはないだろう。

(嫌みを言われたり、無視されるくらいよね)

 多少はこたえるが、過去の自分の行いが原因なのだから、甘んじて受けよう。

 そんなふうに割りきって王宮に向けて出発をしたベアトリスは、想像以上に気まずい空気にさらされて、居心地の悪さに苦しんでいる。

(ものすごく怒っているわ)

 ほかに誰もいないからか、ツェザールは先ほどよりも敵意を隠さず鋭い目でベアトリスを睨んでいる。

(どうしよう)

 過去の行動について謝罪しようかと考えたが、具体的になにをどう反省しているのかと聞かれたら答えられない。
 ベアトリスなりに考えてみたが、ツェザールとの関係は険悪であるものの決定打になるような出来事が思い浮かばなくて、対応のしようがないのだ。
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