モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 立ち止まり様子を眺めている間に、魔法陣の輝きが消えていく。直後そこには白地に薄緑の刺繍を施した服をまとう数人がいて、ロゼの行く手を遮るように佇んでいた。フィークス教団の神官たちだ。

「ひっ!」

 ロゼは引きつった悲鳴をあげて、森の奥に逃げようとした。出口からは遠くなるが、今はそんなことを言っている場合じゃない。

 とにかく彼らから逃げなくては。

 必死になって駆けるロゼの背後で、シュッとなにかを切り裂くような音がした。

 それがなにかを確かめようとしたときにはロゼの体中に激しい痛みが襲ってきて、地面にぶざまに転がっていた。

(い、痛い……なにをされたの?)

 悲鳴をあげる暇もない一瞬の出来事。けれどロゼの行動を封じるには十分すぎるほどの威力だった。

 地面についた腕には無数の傷があり、赤い血が滲み出している。

 きっと体中同じような状態なのだろう。

 ロゼはがくがく体が震えるのを感じていた。
 きっともう自分は無事に森から出られない。そう悟ってしまったからだ。

 絶望の中、神官たちがロゼを囲った。


 それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。

 ロゼは魔法陣で別の森に連れていかれた。角を持つ巨大な狼に遠巻きに眺められながら、荷物のように乱暴に担がれた状態で進み、古い神殿の祭壇の前に放り出された。
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