モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 意識がどんどん薄れていく。そのとき。


「ロゼ!」
 悲痛な叫び声が聞こえ、ロゼは閉じかけていた目をぱちりと開く。ドンッという強い衝撃とともに、もう動かない体に小さななにかが覆いかぶさるように抱きついてきた。

「……レ、ネ?」
(神官たちにつかまってしまったのね……)

「ロゼ、ごめんなさい! 私がわがままを言ったから! だからロゼがこんな目に……」

「……助けてと言うのはわがままじゃないのよ」

 レネはなにも悪くない。幼い子が自分を虐げる相手を恐れるのはあたり前だ。悪いのは神官たちだとそう言ってあげたいのに、もう口が動かない。

「ロゼ? いやだよ、目を開けて」

 レネは目を閉じるロゼに、泣きながらすがる。

「ご、めんね……」

 もう目を開けることはできない。

「お願い神様! ロゼを連れていかないで。大事な人なの……ずっと一緒にいようって、これからはたくさん願い事を叶えようって約束したの!」

 レネの泣き叫ぶ声がどんどん小さくなっていく。

 最後に温かな金の光に包まれた気がしたけれど、ロゼが目を開けることは二度となかった。
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