モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
大司教の罠
勢いよく水面に浮かび上がるように、ベアトリスは目を覚ました。
「い、今のは……」
前世の自分が出てくるいつもの夢だが、あまりに恐ろしい内容だった。
これまでもなにかから逃げる夢だったけれど、ついに追っ手が姿を現したのだから。それも聖女を捜していて、そしてその聖女がレネだったなんて。
夢とは思えないほど現実的で、目覚めた今も心臓がドキドキしている。
胸もとを右手で押さえたとき、今さらのように異変に気がついた。
(ここはどこ?)
見覚えのない部屋だ。慌てて上半身を起こし、周囲を見回して鉄製の格子窓に気づくと、ふるりと体を震わせた。
(私、幽閉されているの?)
横たわっていた粗末なベッドから静かに降りて格子窓に近づく。
やはり中から外に出られないようになっていた。反対側の壁には出入口の扉があるが、きっと外から鍵がかかっているのだろう。
それでも確かめてみようと扉に近づこうとしたそのとき、足音が聞こえてきてベアトリスはその場で身構えた。
乱暴に扉が開き、入ってきたのはツェザールだった。
彼は依然として険しい顔で睨んでくる。いつもならつい目を逸らしてしまうが、ベアトリスは込み上げる怒りを力にして彼を睨み返す。
ツェザールは少し動揺した様子だったが、ゆがんだ笑みを浮かべた。
「ついに本性が現れたみたいだな」
「ツ、ツェザール様、これはどういうことですか?」
状況からこの場所に連れてきたのは間違いなく彼だろう。
いったいなぜこんな真似をしたのか。この行動はユリアンへの裏切りだとわかっているのか。