モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい

「必要がないから話さなかったまでです。ツェザール殿、あなたの役目は終わりました。ここには必要ありませんのでお引き取り願いましょう」
「なっ！　お待ちください……」

　スラニナ大司教に詰め寄ろうとしたツェザールだが、ぎくりとした様子で体をこわばらせた。

「ツェザール様、どうしたのですか？」

　彼の変化にベアトリスは怪訝な顔をする。

「黙ってろ」
「私は心配して……え？」

　ツェザールの一方的な態度に怒りを覚えたベアトリスは彼に詰め寄ろうとした。しかし、次の瞬間びくりと肩を揺らした。
　いつの間にか、ベアトリスたちの周りを多数の神殿騎士と神官が取り囲んでいたのだ。

「な、なんで？」

　気配すら感じなかったのに、どこから現れたというのだろう。

「おそらく転移門がある。発動の気配を感じさせない特別なものだろう」

　ツェザールが緊張した様子を見せる。彼にとっても予想外であり警戒する状況なのだ。

「脅すような真似をしたくはなかったのですが、仕方ないですね」

　スラニナ大司教はまるで被っていた仮面を捨てたように、微笑みを消し酷薄な表情を浮かべていた。

（この顔どこかで……）

　ベアトリスはあぜんとしながらも、込み上げる既視感に戸惑いを覚える。

　スラニナ大司教に強いなにかを感じるのだ。

「ベアトリス嬢はずいぶん頑固のようです。面倒なので聖女の居所を教えてあげましょう」
「知っていたのか！」