モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
大切な人との再会
やがて辺りは静かになる。氷狼を従えたユリアンは、ゆっくりドラーク枢機卿とスラニナ大司教に近づき、剣の柄頭(つかがしら)を打ちつけ彼らの意識を奪った。
「よ、よかった……」
直面していた危機は去ったと、ベアトリスはその場にへたり込んだ。
「ベアトリス」
ユリアンが慌てた様子で駆け寄ってくる。フェンリルはいつの間にか異界に帰ったようだ。
「大丈夫か?」
「なんとか。ユリアン様はおけがはありませんか?」
「俺は大丈夫だ」
ユリアンはベアトリスの体を優しく支えて引き上げる。それから眠るレネに目をやった。
「この子が聖女か」
「はい」
「ベアトリスは聖女を知っていたんだな」
「え?」
なぜユリアンがそれを知っているのだと怪訝な顔をするベアトリスに、ユリアンが少し気まずそうな笑みを浮かべた。
「ツェザールは自分が聞いた音声を指定した相手に送る魔法が使えるんだ。ベアトリスとスラニナ大司教の会話も聞こえていた。そこから予想したんだが、間違っていないだろう?」
あのツェザールにそんな力があったのかと驚きながら、ベアトリスはうなずく。
「はい。私はこの子を知っています。でもどうやって知り合ったのかを話しても、ユリアン様は信じられないと思います」
前世で大切にしていた妹のような存在だと言って誰が信じられるのだろうか。
「俺は信じるよ」
「え?」