モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 神秘的な儀式にベアトリスは感動していた。それはほかの生徒たちも同じようで、講堂を満たす空気は緊張から期待をはらんだものに変化している。

 名前を呼ばれた生徒たちが次々と舞台に上がり、それぞれの精霊を得ていく。様々な精霊を見るのは楽しくて、ベアトリスは夢中になって儀式を見守った。

 精霊にも人間のように位があるようで、より上位のそれを召喚出来ると強い魔法が使用出来る。だから生徒たちは儀式の結果に一喜一憂する。

生徒の半数以上が儀式を終えたとき、一際強い光を放つ精霊が現れた。

「ヘビモスだ!」

 誰かが驚き名前を叫んだ精霊は、黒い光を纏う象のような姿で迫力満点だった。見かけ通りかなり強い精霊のようで、呼び出した男子生徒は得意気な表情を浮かべていた。

 生徒たちの盛り上がりは最高潮だ。しかしベアトリスは段々不安になってきた。こ

(私、ちゃんと召喚出来るのかしら……失敗して家族を失望させたらどうしよう)

ついさっきまで儀式を楽しんでいたというのに、今すぐ逃げ出したい気持ちが襲ってきた。

 けれど無情にも順番は刻一刻と近づいてくる。

 ツェザールとゲオルグは納得出来る精霊を呼び出せたようで嬉しそうにしているが、ベアトリスに彼らを気にしている余裕はない。


「次。ベアトリス・ローゼ・クロイツァー」

 びくっと体が震える。ついに順番が来てしまった。

 不安で仕方がないが、行くしかないと覚悟を決めて壇上に上がる。皆の視線が集中しているのを嫌というほど感じて、冷たい汗が背中を伝い落ちた。
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