モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「そなたに神木の実を授けよう」

 もう何度も聞いたセリフの後、神木の実を受け取る。

 目の前で見るとずいぶんと緑が強くて熟している気配がまるでない。食べ頃とは到底思えない木の実をこわごわ飲み込み、瞬間派手にむせそうになった。

(なにこれ、ものすごく苦い! どうしてみんな平気で食べられるの?)

 思わず顔をしかめると、コスタ司教に冷たい目を向けられる。

「心を無にして。神木の女神に力を求めるのです」

 コスタ司教に言われてベアトリスは魔法陣の中央に立った。皆と同じように両手を重ねて目をつむり、祈りを捧げる格好をする。

(神木の女神様。どうかどうか……私に力をお与えください!)

 するとベアトリスの周りには赤い光の帯が立ち上がった。

(よ、よかった! 成功したんだわっ!)

 ベアトリスの内面に変化があっても、身体に宿る強い魔力が反応してくれたのだろう。

 赤い光はだんだんとベアトリスの目の前に集まり、やがて形をつくり始める。

(いったいどんな精霊なのかな?)

 期待を抱きながら待っていると。

「ピピ!」

 かわいい鳴き声とともに現れたのは、小鳥だった。

「こ、これは……」

 フワフワと丸くちんまりした体は綺麗な赤色。つぶらな黒い瞳がきょとんとベアトリスを見つめている。
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