モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 パタパタ羽ばたいていた小鳥精霊は、ベアトリスがそっと差し伸べた手のひらにちょこんと着地した。

(これが炎の精霊最高位イフリート……なわけはないよね。さすがにそれはわかるけど、小鳥の精霊なんているのかな)

 首をかしげると、小鳥まで真似するように首をかしげた。そのかわいい仕草にベアトリスの胸はキュンとときめく。ああ、なんてかわいい。

 ふかふかの羽をそっとなでてあげると、気持ちよさそうに目を細めて「きゅ」と愛らしくさえずる。

 しかしほのぼの出来たのはそこまでだった。

「これは……なんだ?」

 コスタ司教のまるで不審物を見つけたかのような声ではっと彼を見ると、ものすごく険しい表情をしていることに気づいたからだ。

「こんな精霊は初めて見る。力は……ほとんど感じないな」

(え? 力がない?)

 ベアトリスは動揺しながら小鳥を見る。それと同時に舞台下の生徒たちが騒めいていることに気がついた。
 先ほどまでの盛り上がりとは違う、気まずさと嘲笑の空気が広がっていた。

(こ、これってやっぱり……)

 どうやら危惧していた通り、ベアトリスは召喚を失敗したようだ。
 小鳥を胸に抱いたまま、ベアトリスはぼうぜんと立ち尽くしていた。

 その後、学院長とコスタ司教に舞台を追い出されて、小鳥と一緒に自分の席に戻った。
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