モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 未来の魔導士にとって最重要の儀式は、こうしてベアトリス以外の人々にとっては喜びをもって終了した。


「ト、トリス。そんなに落ち込むことはないぞ」
「そうよ。トリスちゃんは騎士になるわけじゃないんだから、強い魔法が使えなくたって問題ないわ」

 さんざんな結果を持って帰ったベアトリスを、公爵一家は必死になって慰めてくれる。

 テーブルの上には、ベアトリスの好物だったデザートの数々があふれんばかりに並べられていた。少しでも慰めになるようにと用意してくれたのだろう。

「ピピ……」

 ベアトリスの肩にちょんと乗った小鳥の精霊が興味深そうに、テーブルの上を眺めている。

「しかしなぜこのような結果に? トリスの魔力では考えられない。この精霊について調べたが前例がなく、どのような能力を持っているのかわからない」

 兄ランベルトは公爵夫妻よりは理性的で、早くも小鳥について調べたようだった。

 ベアトリスは申し訳ない気持ちになりながら口を開く。

「たぶん、特別な力はないと思います。召喚式を行ったコスタ司教が力を感じないとおっしゃってましたから」

 部屋の空気がますます重くなる。

「い、いいじゃないの。魔力がなかったとしても、こんなにかわいい小鳥ちゃんが来てくれたんだから」

 母がなにか言いかけた兄を鋭い目線で封じてから、ベアトリスに優しい言葉をかける。
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