モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「そうだぞ。トリスは音楽の才能があるんだから、今後はそちらに力を入れたらいい」

 父も同様に励ましてくれるが、音楽の才能の方もどうなっているかわからない。今言い出す勇気はないけれど。

(それにしても、ベアトリスは家族にはとても愛されていたのね)

 学院で嫌われながらも堂々と振る舞えていたのは、絶対的な味方がいたからなんだろう。

「お父様、お母様、お兄様。励ましてくれてありがとうございます。それから期待に応えられずにごめんなさい」

 家族を落胆させた事実に罪悪感が込み上げる。

「そんな! トリスちゃんが謝る必要なんてないわ」

「でもクロイツァー公爵家の評判まで落としてしまったようです。力を失った家と言ってる人がいましたから」

 帰り道、こそこそ陰口を叩かれているのが聞こえてきた。

「中傷する方が無知なの。当家の後継者ランベルトがサラマンダーを召喚しているのは多くの者が知っていることよ」

(サラマンダー……そういえばレオがイフリートと同じくらい強い精霊って言っていたわ。お兄様はすごいのね)

 いくばくかほっとして、ようやく落ち着くことができた。

 後継者の兄がそれほど優秀なら、ベアトリスがだめでもなんとかなりそうだ。

 その後、家族と一緒にデザートを頂き、小鳥精霊を肩にのせたまま私室に引き上げた。

 気がきくサフィがたっぷりお湯の入ったお風呂を用意してくれていて、ベアトリスはゆっくりと疲れを癒したのだった。

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