モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
落ちこぼれた公爵令嬢
 召喚式を境に、学院内でのベアトリスの立場は急降下した。

 筆頭公爵家令嬢という身分のおかげで直接的ないじめはないものの、それまで取り巻きだった貴族令嬢が近づかなくなり、それ以外の生徒からも距離を置かれ話し相手がいない状況だ。

 成績もひどいものだ。以前は努力しなくても持って生まれた高い魔力で好成績を取れていたが、今は実技に関してほとんどの課題をこなせていない。いったいなにが起きたのかと教師たちの噂になっているようだ。

 さすがに居たたまれなくて気分が沈む。けれどベアトリスには希望があった。

 あと五日ほどで学院は長期休暇に入るのだ。

 休みになれば冷たい視線にさらされて神経を削らずに済む。なによりうれしいのは自由時間が増えること。いろいろやりたいことがあるから楽しみだ。


 昼休み。ベアトリスは学院の裏庭で持参した弁当を広げていた。

 庶民の味が恋しいあまり、公爵家の豪華な朝食のあまり材料を使い自作したものだ。

 初めは厨房の隅で料理をするベアトリスの姿に、公爵家の家族と使用人たちは衝撃を受けていた。

 とくに母が『トリスちゃんがおかしくなったわ』と戸惑っていたが、楽しそうに料理をするベアトリスを見て自由にさせようと決めたようだ。
< 30 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop