モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい

「おいしい?」
「きゅ!」

(ああ! なんてかわいいの。小鳥ってこんなにかわいくて人懐っこかったのね。それとも精霊だからなのかな)

 ほのぼのした気持ちでピピを眺めながら自分もサンドイッチを頬張ったとき。

「クロイツァー公爵令嬢」

 突然背後から声をかけられた。

 お昼時、この裏庭に誰かが来たことはなかったため、油断していたベアトリスは飛び上がり、食べかけていたサンドイッチを喉に詰まらせてしまった。

「うっ! ごほっごほっ!」

「ぴぴぴ?」

 ベアトリスが派手に咳き込むと、ピピが驚いたように鳴いた。

「み、水を……」
(す、水筒! どこに置いたんだっけ?)

 必死に探していると、すっと目の前に水が汲まれたカップを差し出された。

 助かったとばかりにベアトリスはそれを受け取り、遠慮なくごくごく飲む。

 しばらくすると呼吸は落ち着き、ほっと息を吐いた。

「すみません、お騒がせしてしまい……」

 いきなり豪快に咳き込まれて驚いただろう。恥ずかしいところを見せたと照れ笑いをしつつ相手の顔をよく見たベアトリスは、再び驚きで引っくり返りそうになった。

 目の前にいたのはユリアンだったのだ。

(な、なんでユリアン王太子がこんなところに? お昼は側近と王族用の特別室で過ごしているんじゃないの?)
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