モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 それが今なのだろうか。

 いくら人気がない場所だからといって、学院でというのは驚きだ。

 それとも品行方正な王太子として、公の場では言いづらい文句でも言う気でいるのか。

 ベアトリスはかなり緊張してユリアンの発言を待つ。

「クロイツァー公爵令嬢」
「はい!」

 改まった様子に、やはりそうだと確信する。

「召喚した精霊の様子は?」
「え?」

(あれ? 全然違う話題だわ)

「あの……仲よくしていますが」

 ユリアンはなぜかベアトリスの発言に呆気に取られたようだった。

「……コスタ司教が言うには、令嬢の精霊はこれまで記録のないものだ。気になるところなどなにもないのか?」

 ユリアンは、珍しい精霊のピピが相当気になっているようだ。

 ベアトリスはすっと右手を胸の前に出した。

「ピピおいで」

 するとユリアンを警戒していたのかベアトリスの背中に隠れていたピピが現れて、フワリと羽ばたき手のひらにちょこんと着地した。

「きゅ!」

 来たよとばかりに首をこてんとするピピの姿を見て、ユリアンは何度目かの驚愕をしたようだった。

「このように、精霊は元気に過ごしています。変わったところもありません」

「……変わったところがないって、本気か?」

 ユリアンがなにかつぶやいたが、とても小さな声だったのでうまく聞き取れない。

(気になるけど、王太子に向かってもう一度言ってって言うのは失礼だよね)
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