モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい

　しばらくするとユリアンは気を取り直すように咳払いをした。

「まあいい。ではクロイツァー公爵令嬢にはっきり聞こう。最近の態度の変化はどういうつもりだ？」

　ユリアンの声が少し厳しいものに変わった気がした。彼もベアトリスの言動の変化に気づいていたのだ。

　しかしベアトリスは慌てなかった。公爵家でも最近の言動を不審がられまくったため、うまい切り返し方は学習済みだ。

「これまでの振る舞いを反省したんです。今後は皆に迷惑をかけないように過ごそうと心がけています」

　自信を持って告げた。

「令嬢が反省？」

　しかし少しも信用されていないのがユリアンの表情でわかる。

（お母様たちは感激してくれたんだけど、ユリアン王太子には通じないみたい……。まあ過去のベアトリスの行動を鑑みたら、当然の反応なのかな）

　とはいえ、この理由で通すしかない。

「はい。心を入れ替えました。二度と皆様に迷惑をかけないと誓います。もちろん王太子殿下にも近づかないようにいたします」

　必死にもうなにも悪いことはしませんとアピールする。

「私に近づかない？　その言葉を信じろと？」
「はい。学院がありますので完全に消えることはできませんが、可能な限り姿を見せないように気をつけます。むやみに話しかけたりもいたしません」

　ユリアンは腕を組んでベアトリスを見下ろす。

「では婚約者としての務めはどうする気だ？」