モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「あ、それは、婚約破棄まではしっかり務めを果たします」

 現状なにもしていないだろとツッコまれるかと思ったが、ユリアンが気にしたのは別のところだった。

「婚約破棄?」

 彼は不満そうな、納得がいかなそうな様子に見えた。もしかしたらまだ言う気はなかったのに、ベアトリスが先回りして言ってしまったからだろうか。

 身分が下のベアトリスから言うのはまずかったのかもしれない。

(ユリアン王太子としても気分が悪いでしょうし……失敗してしまった)

「婚約解消は考えていない。不用意な発言をするな」

 不快感を隠さず言われて、ベアトリスは驚き瞬きをした。

(え、婚約破棄してくれないの!? 私は自由に暮らしたいのに……それにどうして怒ってるんだろう)

 彼の考えが分からない。

(筆頭公爵のお父様ともめたくないから? でも私のひどいやらかしの数々を知っているみたいだし、婚約解消になっても仕方ないって言いそうなのにな)

 第三者からも、わがままなベアトリスの婚約者であるユリアンは同情的な目で見られている。

「婚約は王命だ。個人の感情で解消出来るものではない」
「そ、そうですね。申し訳ありません」

 言われてみればその通りだ。いくら王太子でも国王の命令には逆らえない。
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