モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ユリアンはダールベルクの王太子だが、サラエナ国王の孫でもある。それゆえに、王位継承に不満を持つ者が一定数存在する。

 加えてユリアンの母は魔力を持っていなかった。そのためユリアンが高位の精霊を召喚するのは無理ではないかという者も多かった。

 そのようなユリアンのマイナス面を補うのが、ベアトリスとの婚約だった。

 建国王の妹姫を始祖とするクロイツァー公爵家は、ダールベルク王国で最も由緒正しい貴族の家。しかもベアトリスの祖母は先代の国王の姉だった人だ。血筋家柄、すべてが完璧で、保守的な貴族が納得する縁談。

 ユリアンがいくら嫌だと思っても、ベアトリスと婚約解消をしようとすればほかの高位貴族は確実に反対するし、父である国王も許可しないだろう。

 政略結婚なのに相手が気に入らないなんて理由は通用しない。

 婚約解消するには、ユリアンの能力が欠点を補ってあまりあるほどのものだと認めさせるか、またはベアトリスは未来の王妃としての資質が著しく欠けていると周知させること。

 ユリアンは召喚式にかけて、自身の力を磨きながらじっと機会をうかがっていた。

 そして先日の召喚式で、ユリアンは最高位の精霊である氷狼フェンリルを呼び出した。

 フェンリルは建国王を守護していた精霊として知られている。同じ精霊を得たユリアンの評価は一気に上がった。同時に、召喚に失敗したベアトリスの評判は著しく低下した。
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