モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 さらに彼女は、精霊と仲よくしていると言いだした。

(精霊を従えた、とは言わないんだな)

 目の前の女性が、本当に長年ユリアンを悩ませたベアトリスなのだろうか。

 姿(すがた)形(かたち)は変わらない。それなのにまるで中身が変わってしまったようだった。

 雰囲気まで変化していて、今のベアトリスは庇護欲を刺激する。

(どうしてなんだ?)

 突然の変化が納得出来ずに問いつめる。

 すると彼女は、少し緊張した様子でこちらを見た。

 悪意のない澄んだ瞳と視線が重なり、ユリアンの鼓動が跳ねる。

『はい。心を入れ替えました。二度と皆様に迷惑をかけないと誓います。もちろん王太子殿下にも近づかないようにいたします』

『婚約解消まではしっかり務めを果たします』

 彼女の言葉は衝撃的だった。まさかと思った。いったいなにが起きているんだ?

 ベアトリスに婚約解消を告げたら、彼女は激しく動揺し抵抗するだろうと思っていた。

 しかし実際動揺したのはユリアンの方だった。

 当初の用件を伝えることは出来ないどころか、話の流れで『婚約解消は考えていない』と宣言して、ベアトリスの前から立ち去ったのだ――。

< 46 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop