モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 部屋にこもって仕事に集中していると、突然甲高い悲鳴が聞こえて、ユリアンはペンを置いて窓の向こうを睨んだ。

『なにがあったんだ?』

 ミリアムはツェザールがついているから危険な目に遭う心配はほとんどない。そうなると侍女かメイドか。

 どちらにしても確認しようと、ユリアンは椅子から立ち上がった。

 同じように様子をうかがっていたゲオルグと、階段を下りて玄関ホールに向かう。そのとき、血相を変えたツェザールが駆け込んできた。

腕にはぐったりとしたミリアムをかかえている。

『なにがあった?』

 ユリアンが顔色を変えて問うと、ツェザールは怒りで目をつり上げて吐き捨てる。

『ベアトリス・クロイツァーのせいで泉に落ちたんだ!』

 ユリアンは目を見開く。いったいなぜベアトリスがここにいるのだろうか。

 状況が理解出来ないが、今はミリアムの手当が先だ。ゲオルグが医師の手配などを侍女に指示した。

 すぐに駆けつけた医師の診察を受けてミリアムが眠りについてから、ようやく事情を聞くことが出来た。

 ツェザールが言うには、ミリアムが興味津々で庭を散策していたとき、突然激高したベアトリスが現れてミリアムに暴言を吐いたそうだ。
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