モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ミリアムも気が強い方なので、果敢に言い返したところさらに怒らせたようで、ベアトリスが炎の魔法を放ってきた。

常識的に、令嬢同士の言い争いで魔法攻撃なんて仕掛けない。驚愕したミリアムは大慌てで逃げて、薄氷が張っていた泉の上を通り落ちてしまった。

『いったいなぜそんなことに? ミリアム嬢が攻撃されたときお前はどうしていたんだ?』

 ゲオルグが怪訝な面持ちで問う。ツェザールは口惜しそうに拳を握りしめた。

『ミリアムにぴったりついてくるなと言われて、少し距離を置いていたんだ。あの女が現れてすぐに駆けつけたが、炎に邪魔されて間に合わなかった』

 クロイツァー公爵家の炎の力は強大だ。遠慮なく放たれたそれはツェザールの進みすら妨げたのだろう。

『学院を卒業するまでは、許可なく攻撃魔法を使ってはならない。クロイツァー公爵令嬢はそんな規則すら守れないのですか』

 ゲオルグが心底あきれたようにつぶやく。ユリアンは怒りの衝動を抑えるために目を閉じた。

 おそらくベアトリスは、ミリアムがユリアンに招待されて離宮に滞在していると誤解したのだろう。彼女は婚約者であるユリアンにほかの令嬢が近づくのを許さない。これまでにも、ただ会話をしていただけの令嬢に難癖をつけていた。

(だがこれはやりすぎだ)
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