モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
『ひどい状況だが、今回はクロイツァー公爵家に正式に抗議出来る。学生でありながら勝手に魔法攻撃を行い伯爵令嬢に危害を与えたんだ』

 ゲオルグがユリアンとツェザールを見回す。ユリアンはすぐにうなずいた。しかし真っ先に同意するはずのツェザールが、顔色を悪くして目を伏せた。

『ツェザール?』
『……俺も魔法を使った』

 後悔が滲む告白にユリアンは息をのんだ。

『詳しく説明しろ』
『頭に血が上ってあの女に風の刃を放った』
『……クロイツァー公爵令嬢はどうしたんだ?』

 ゲオルグが慎重に問いかける。ツェザールがわずかな間のあと口を開いた。

『けがをして、追いかけてきた彼女の従者[野島51]が連れて帰った』
『それは……まずいな』

 ゲオルグの表情が曇る。それからユリアンにうかがうような視線を向けた。

 ユリアンは重い気持ちを吐き出すように息を吐いた。

『クロイツァー公爵令嬢を罪に問えない。こちらが訴えを起こせば、向こうも同様にツェザールを訴える』

 そうなれば分が悪いのはツェザールだ。許可なく魔法を使い人を傷つけたという同じ罪でも、筆頭公爵家令嬢で王太子の婚約者でもあるベアトリスを害した罪の方が格段に重くなる。

『クロイツァー公爵夫人は隣国の王族でもあるから、下手したら外交上の問題にもなる』

 ゲオルグが力なくつぶやく。ツェザールは無念そうにしながらも、状況を理解していた。
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