モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 事態を重くみた王家はフィークス教団を率いるドラーク枢機卿に使いを出し、状況を確認するように求めた。その結果、現在の聖者が偽者であると発覚したのだ。

 現聖者は二十六歳の女性、聖女だ。地方の没落した貴族令嬢として生まれたが、洗礼で聖女の素質ありと発覚して神殿に引き取られた。その後、大切に保護されながら聖女としての務めを果たしていたはずだが、途中で偽者と入れ替わっていた。

 おそらく二十年前に聖女が神殿を抜け出したときに、入れ替えが起きたのだろうとのことだ。

 それほどの長期間聖女が不在でありながら、なぜ今までは問題が起きなかったのか。説明を求めたものの、納得出来る返事はもらえていない。教団はなにかを隠しているようで協力的ではなく、王家をいら立たせていた。

「我々が非協力的だというのは誤解です。独自の調査を続けており、ようやく手がかりを掴みました」

 スラニナ大司教が国王に告げる。国王は「ほう」と相づちを打ち、続きを促した。

「二十年前に聖女様が行方不明になった際の詳細が一部判明しました。聖女様は実家があった辺境を恋しがり、神殿に納品に訪れた商人の馬車に忍び込んだのですが、王都の外れで捜索をしていた神官騎士に発見されました」
「そのときに保護したのが聖女ではなく別の人間だったと? 信じがたいな。聖女の顔を関係者全員が見間違えるわけがなかろう」
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