モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 あきれ顔の国王の言葉は誰もが当然思い至ることだった。

「おそらく聖女様が無意識のうちに、認識誤認の魔法を使ったのではないかというのが、我々教団の見解です」
「幼い子が使える魔法ではないだろう」

 認識誤認の魔法の使い手は非常に珍しい上に難易度が高く、ダールベルク王国内で片手で数えられるほどしかいない。

「はい。ですが聖女様は特別な方です。幼くても奇跡の力をお持ちなのです」

 国王は黙る。ユリアンも納得は出来ないものの、強く反論する材料がなかった。

 スラニナ大司教の言う通り、聖者と呼ばれる者の魔力は特別だ。彼らだけは精霊の力を借りずとも強力な魔法を使えるのだ。凡人にはない奇跡を起こせても不思議はない。

 ユリアンは頭を切り替えて口を開いた。

「スラニナ大司教殿の話を信じるならば、真の聖女はそのまま商人の馬車に乗っていたということになるが、馬車の目的地はわかっているのか?」
「はいもちろんです。商人は神殿を発ったあと、クロイツァー公爵領に向かったようです。公爵領を調査すればなにかが出てくるかもしれません」
「クロイツァー公爵領?」

 ユリアンは思わず顔をしかめた。

「王家といえどクロイツァー公爵領を勝手に調査は出来ない。公爵に協力を要請するしかないな」

 秘密裏に調べる場合、大々的な行動は不可能になり時間がかかるし、公爵に気づかれたら王家との関係にひびが入る可能性がある。
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