モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「それは困ります」

 スラニナ大司教の考えるそぶりもない即答に、国王はため息をついた。

「これまでは教団側の意向を汲んで聖女不在を公表せずに来たが、これ以上は無理だ。神木が枯れて精霊の力を失えばこの国は終わりだ」

 ダールベルク王国が近隣諸国で最も強い国力を誇っているのは、精霊の存在があるからだ。強い魔法を使用することにより、軍事力も文化も他国の大きく引き離しているのだ。

「一刻も早く聖女を見つける必要がある。三大公爵家に協力を要請する」

 国王は断言して玉座を立った。話は終わりという合図だ。

 ユリアンは頭を深く下げて国王を見送った。



 その後自分の執務室に戻ると、ゲオルグとツェザールが待ち構えていた。

「陛下の決断は?」

 側近の彼らは聖女不在について知っている。

「三大公爵家に情報共有をして捜索範囲を広げる」
「まあ、それしかないだろうね」

 ゲオルグが納得したように言う。

「教団の調査に進展があった」

 先ほど聞いた情報をふたりに話す。するとツェザールが顔をしかめた。

「クロイツァー公爵領というのがやっかいだな。あの女が邪魔をしてきそうだ」
「ツェザール。その呼び方はやめろと言っただろ。仮にも王太子の婚約者で筆頭公爵令嬢だ」

 ゲオルグに窘められて、ツェザールは眉を寄せる。相変わらず彼のベアトリスへの評価は最低最悪だ。
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