モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
(だが今のベアトリスを見たら、ツェザールの評価は変わるんじゃないか)

 ユリアンは目を閉じて、昨日届いた報告書の内容を思い出した。

 王太子の婚約者である彼女には、王家の間諜がつき日頃から動向を観察している。

 学院が長期休暇に入った今もそれは変わらない。

 報告書によると、ベアトリスは連日王都外れの孤児院に通い、孤児の面倒を見ているようだ。

 貴族が慈善事業で孤児院の支援をすることはよくあるが、ベアトリスの行動はそれとは違っているようだった。

 金銭を与えるだけでなく自らが子どもの面倒を見て、孤児院の環境改善に尽くす。

 文字の書き取りや裁縫、剣技なども従者の力を借りて行っているのだとか。

 初めてその報告を見たとき、なにかの間違い、でなければいつもの気まぐれかと思ったが、その後も彼女はぶれずに支援を続けている。子どもたちにも慕われ、ベアトリス本人も楽しんでいるように見えるらしい。

「ユリアン、どうしたんだ?」

 ゲオルグに声をかけられて、ユリアンははっと我に返った。

「いや……一度クロイツァー公爵令嬢に会ってみる」
「は? なんでだよ? なあユリアン、最近おかしくないか?」

 ツェザールは不審信感をあらわにする。

「俺は賛成だよ。婚約者なんだから、顔を合わせて話した方がいい」

 ゲオルグは対照的にベアトリスとの会話を勧めてきた。ユリアンはこくりとうなずいた。

 ◇◇

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