モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ダールベルク王国に聖女がいるのは知っている。神殿の奥深く守られていて滅多に姿を現さない、とても神聖な存在。

 その聖女が行方不明になったのなら一大事だ。

 ただ、なぜその件をユリアンがベアトリスに知らせに来たのだろう。

 クロイツァー公爵家と聖女の間に特別な関係はなかったはずだ。行方不明なのは心配だが、ベアトリスに出来ることはない気がする。

 しかしユリアンはまるで非難するような目でベアトリスを見ている。

「言ったままだ。今我が国は聖女が行方不明という非常事態に陥っている。君の立場なら、もっと深刻に受け止めるべきだと思うが」

 ユリアンの言葉で、受け答えに失敗したのだと気がついた。

(のんきな反応をしてしまったけれど、それだと王太子の婚約者としても公爵令嬢としてもだめってことだわ)

 正直言ってピンとこないが、それほどの非常事態というのは伝わってくる。

(聖女様って、具体的にどんな役割があるんだっけ)

 残念ながらベアトリスの知識の中にそれらしいものはない。ロゼ・マイネ時代も聖女は身近ではない存在だった。

(前までの私、もうちょっと勉強してくれていたらよかったのに)

 ユリアンはいまだ不審感いっぱいの目でベアトリスを見すえている。

 これは知らないでは済まなそうな雰囲気だ。

(とはいえ、ごまかすのは無理だよね、なにか聞かれてもまったく答えられないんだし)
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