モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ベアトリスは迷った末に、正直に言うしかないと腹をくくった。

「申し訳ございません。私には聖女様についての知識がありません」

 ユリアンの表情がなにを言っているんだ?とでも言いたそうな訝(いぶか)しげなものになる。

(うう……ものすごく不審そうな目をされてるんだけど)

 しかし、知らないものはどうしようもない。知ったかぶりをしても状況が悪化するばかりだ。

「聖女の知識がない? まさか……高位貴族なら五歳の子でも知っていて当然のはずだろ? それすらなくて王太子妃教育はどうしていたんだ?」

 ユリアンは頭をかかえて、何事かをぶつぶつつぶやいていたが、やがてあきらめたようにため息をついた。

「そういえば君は王太子妃教育を嫌っていたな。聖女にすら関心がないのは予想外だったが」

 ああこれは完全に軽蔑されている。そんな様子を目のあたりにするとさすがにショックだ。

(で、でももともと評価はどん底なんだから、これ以上下がらないってことだわ)

 残念な事実を前向きに捉えて気持ちを立て直す。

「お恥ずかしいのですが、王太子殿下のおっしゃる通りです。反省して今後はしっかり学びたいと思っていますので、お手数ですが先ほどの件のなにが問題なのか教えて頂けませんでしょうか」
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