モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 本音では王家が動くほどの壮大な話は自分に関係ないと思っている。けれど、ちゃんと話を聞かないとユリアンはいつまでも帰ってくれないような気がしたのだ。

 あくまで低姿勢に教えを請うたからか、ユリアンは驚きの眼差しでベアトリスを見ている。

(前の私は教えてなんて言わなかったものね。性格が変わりすぎだって思われてそう)

「聖女は神木の守り手だ。神木は精霊が暮らす異界を結びつける鍵で……」

 仕方がないと思ったのか、ユリアンはべアトリスに親切丁寧に説明をしてくれる。真剣に話を聞き、だいたいの事情を察した。

(つまり聖女様がいないと神木が枯れてしまって、異界とのつながりが消えるということね)

 結果として、人々は精霊を召喚出来ず強い魔法が使えなくなるだろう。

(え……それじゃあピピもいなくなってしまうってこと?)

 ベアトリスはショックで息苦しさを覚え胸を押さえた。

 ピピはもうベアトリスにとって大切な存在になっている。

(ピピと会えなくなるなんて悲しい……つらすぎるわ)

 なんとしても神木が枯れるのを防がなくては。

「聖女はクロイツァー公爵領に向かったと思われる。近いうちに調査をするため、クロイツァー公爵家にも協力を願いたい」
 ベアトリスはようやくユリアンの用件を理解してうなずいた。
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