魔法のいらないシンデレラ
えっ?と目を向けると、店の右奥から、作務衣姿のおじいさんがこちらを見ていた。

「やってみたらええ。ほら、はよ、こっち」

手招きされ、瑠璃と奈々は、ためらいながら近づいた。

「わ!暑い」

そこには溶解炉があり、中で炎がボーッと燃えているのが見える。

「この竿、吹いてみな」

おじいさんが差し出した長い吹き竿を、瑠璃は口に当てて恐る恐る吹いてみる。

「ゆっくり、ながーくな。もっとながーく」

言われるがまま、とにかく息を吹き込む。

おじいさんは、竿を少しずつ回してくれる。

「よし、ええぞ」

竿の先のガラスが丸くきれいに膨らんだところで、瑠璃はようやく口を離した。

ふう、と汗を拭う。

「初めてか?それにしちゃ、ええ感じや」

ニコリともせず、瑠璃に背を向けたままおじいさんは言う。

「ほんなら次、そっちの子」

奈々は自分を指差してから、おずおずと近づく。

瑠璃と同じように、ふーっと息を吹き込んでガラスを丸く膨らませる。

「ちょっと形、曲がっとるけど、まあええ。これも味や。ほんなら次、絵付けな」
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