魔法のいらないシンデレラ
ガラス工房 清河が、ホテル フォルトゥーナ東京と提携を結んだことは、予想以上に大きくニュースで取り上げられた。

記事を読んで瑠璃達は驚いた。

これまで清河は、ホテルやデパート、通販サイトのバイヤーはもちろんのこと、なんと美術館の誘いも断っていたのだ。

どんなに良い条件や高い金額を提示しても、決して首を縦に振らなかったあの清河が、いったいどうやって、しかも東京のホテルに?

マスコミはこぞって総支配人にインタビューしたがり、清河の作品を見ようと多くのお客様がホテルを訪れる。

しばらくの間ホテルは、ガラス工房 清河に関する対応でてんやわんやだった。

そして事態が少し落ち着いた頃、営業部企画広報課は、総支配人から功労賞を贈られることになった。

「実質、瑠璃ちゃんと奈々ちゃん二人の賞だよ」

青木の言葉に、他の男性社員も頷く。

「おめでとう!そしてありがとうー!」

ヒューヒューと口笛まで吹きながら、瑠璃達に大きな拍手を送る。

瑠璃と奈々は、照れ笑いを浮かべて顔を見合わせた。

そんな瑠璃の身に大きな危険が迫ったのは、それからしばらくしてのことだった。
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