魔法のいらないシンデレラ
第十六章 ピンチ
朝、いつものように出勤しようとホテルに向かっていた瑠璃は、電車を降りたところで、電話の着信に気づく。

ホテルからの電話だった。

「はい。早乙女です」

人の波から外れ、階段のうしろで電話に出る。

「もしもし、総支配人室 秘書の早瀬です」
「あ、早瀬さん。おはようございます」
「瑠璃さん、今どちらに?」

早瀬は、いつもの口調ながらも、どこか様子がおかしい。

緊迫した雰囲気で、瑠璃に短く質問する。

「はい。最寄り駅で電車を降りたところです」
「分かりました。すぐそちらに行きますので、その場を動かないで待っていてください」

そう言うと、プツッと電話は切れた。

(え、早瀬さんがこちらに?ここで待つの?なにかしら…)

とりあえず、言われた通りにその場で待つ。
< 131 / 232 >

この作品をシェア

pagetop