魔法のいらないシンデレラ
第十七章 サプライズ
二人きりになった総支配人室。

早瀬を帰らせてホッとするかと思いきや、一生は逆に妙な緊張感に包まれていた。

(静かだ。何か話を…)

そう思いつつ、何を話せばいいのか分からない。

「あの、もう定時を過ぎているから、上がってもらっていいよ」

とりあえずそう声をかけると、瑠璃は少し首をかしげた。

「でも…他にやることもないですし」

確かに…とデスクの上の時計に目を向けた一生は、ふと、Sep.19という日付けを見て、驚いて目を見開いた。

(しまった!そうか、今日は9月19日か!少し前まで覚えていたのに、俺としたことが…)

「あの、どうかされましたか?」

瑠璃がこちらの様子をじっと見つめている。

「あ、あの。ちょっと、奥の部屋で、待っていてもらってもいいかな?」
「え?部屋で、ですか?」
「ああ。実は、その、頼みたいことがあって…そう。うん」

ますます小首をかしげる瑠璃に思わず見とれていると、分かりました、と言ってデスクを片付けた瑠璃は、では失礼致します、と奥のドアへ消えた。
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