魔法のいらないシンデレラ
「瑠璃さん、所作がとても美しいですね。見とれてしまった」
「え?そうですか?」
「ああ。うちのロビーラウンジで1番ベテランのスタッフと同じ手つきで、流れるようにきれいな動きだった」
「そんな…」

じっと見られていたことの恥ずかしさに、瑠璃はうつむいて紅茶を飲んだ。

ケーキも美味しく頂き、二人はソファに場所を移して、2杯目の紅茶を飲みながらおしゃべりする。

瑠璃は、2つ年上の姉がいて、生後半年になる赤ちゃんがいることも話し、写真を見せる。

「へえー、かわいいな。瑠璃さんにも似てる。目元とか、ぷっくりしたほっぺたとか」
「え?私、ほっぺたぷっくりしてますか?」
「うん。してるよ」
「ええー?そんな。子どもみたい」
「あ、ほら!今なんてさらにぷっくり膨らんでる」
「え?もう!」

瑠璃は、ふくれっ面で、拗ねたように一生を上目遣いに見る。

一生は、さらにおもしろそうに声を上げて笑っていた。
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