魔法のいらないシンデレラ
やがて紅茶を飲み終わると、瑠璃は窓からのきれいな夜景を見つめる。

(なんてすてきな夜…。朝、あんなことがあったなんて信じられないくらい)

「一生さん、本当にありがとうございます」

瑠璃は改めてお礼を言う。

どういたしまして、と一生は微笑んだ。

「でも、どうして私の誕生日を?」

ずっと気になっていたことを聞いてみる。

「ああ。これでも君の雇い主だからね。履歴書を持っている」

あ!なるほど…と納得しつつ、でも、いち社員の誕生日なんて、覚えているものかしら?と不思議な気もした。

「あの、一生さんのお誕生日も教えて頂けますか?お返しに、私にもお祝いさせてください。何がいいかな…」

早くも考え始めた瑠璃に、一生はクスッと笑う。

「ありがたいけど、ちょっと間に合いそうにないな」

え、それはどういう…

瑠璃が怪訝そうな顔を向けると、一生は、チラリと腕時計に目を落とした。

「あと二時間しかない」
「…え?」

パチパチと瞬きをしてから瑠璃は、あっ!と声を上げた。

「もしかして、明日ですか?」
「そう。君と1日違い。9月20日だ」

なるほど、それで瑠璃の誕生日も覚えていたのだろう。

「…すごい偶然」
「ああ、そうだな」

二人は、顔を見合わせて微笑んだ。
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