魔法のいらないシンデレラ
「え?会長、明日出発されるのですか?1週間滞在されるご予定と聞いておりましたが」

フレンチレストランの個室。

会長とその孫娘との食事の席で、一生は驚いて声を上げる。

「そうなんだよ、急に仕事が入ってね。慌ただしくて申し訳ない。私ももっとゆっくりこのホテルを楽しみたかったが、仕方ない」

その代わり…と会長は、嬉しそうに孫娘に目を向ける。

「麗華は予定通り、1週間こちらでお世話になるよ。よろしくな、一生くん」
「は、はい。かしこまりました」
「麗華はな、お嬢様学校の短大を卒業して、半年ほどアメリカに行っておったんだよ。帰国したばかりだが、ぜひこのホテルに泊まってみたいと言うから連れて来たんだ。まだ20歳と若いし、見ての通りの美人だ。一生くんとも、美男美女でお似合いだな。ははは!」

(…そういうことか)

ここ最近、やたらと連絡してくる高坂の意図がようやく分かったと同時に、面倒なことになったと、一生は心の中でため息をついた。
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