魔法のいらないシンデレラ
一生がジャケットを着て出口に向かうと、麗華の甘ったるい声がした。

「えー、一生さん、行っちゃうのー?」
「はい、来客がありまして。申し訳ありません」
「じゃあ、麗華も一緒に行くー」

早瀬は再びギョッとする。

「麗華様。大事なお話の席にそのようなことは…」

早瀬の言葉に、一生がかぶせて言う。

「麗華さん。美味しいデザートと紅茶をこちらに持って来させましょう。私の用事は、なるべく早く済ませますので、どうぞゆっくり召し上がっていてください」

ダメ押しのように爽やかな笑顔を浮かべ、一生は部屋をあとにした。

(す、すごい。総支配人がこんなにも忍耐強く、苦手な女性に優しくされるなんて…)

一生の本気を感じ、早瀬はゴクッと生唾を飲み込んだ。
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