魔法のいらないシンデレラ
やがて21時になろうとする頃、会は盛会のうちにお開きとなった。

ご婦人方のおしゃべりは尽きることなく、皆、名残り惜しそうに会場をあとにする。

一生は早瀬に、エントランスにタクシーを多めに呼んでおくよう伝えた。

着飾った名家のご婦人が、電車で帰るはずはない。

迎えの車をよこすか、タクシーを使うかのどちらかだろう。

いずれにしろ車寄せは混雑するはずで、早瀬には、しばらくの間エントランスを仕切ってもらうことにする。

「あまりに時間がかかるようなら、お客様をロビーラウンジにご案内して、コーヒーをサービスするように」
「かしこまりました」

早瀬は一生に頭を下げると、すぐさま踵を返した。

最後のお客様を扉の横で見送った佐知が、ようやくホッとしたように肩の力を抜く。

一生は、お疲れ様でしたと声をかけた。

「ありがとう。一生さんとホテルの皆さんのおかげで、とても楽しい同窓会になったわ」
「皆様に喜んで頂けたのでしたら、こちらとしても嬉しい限りです。ぜひまた来年も、お待ちしております」

あら、お上手ねと、佐知は上品に笑った。
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