魔法のいらないシンデレラ
皆の祝福を受けて、すでに涙で潤んだ瞳の瑠璃は、やがて父とともに一生の前に歩み出た。

そっと顔を上げると、一生は優しい笑顔で瑠璃に頷く。

「一生くん。あー、瑠璃はかなりの頑固者で、ひと筋縄ではいかない、扱いづらい娘ですが…」
「ちょ、ちょっと、お父様」

涙が引っ込んでしまった瑠璃が、慌てて父を止める。

「それでも、あなたと出会って娘は変わりました。親では、どうやっても助けてやれない場面がある。そこを乗り越えられたのは、あなたのおかげです。どうぞこれからも、娘をよろしくお願いします」
「こちらこそ。今の自分があるのは瑠璃さんのおかげです。彼女の優しさ、強さ、温かさ、全てが私の支えであり、そんな彼女を生涯かけてお守りするのが私の使命です。必ず瑠璃さんを幸せに致します。こんな私に大切なお嬢様を託してくださって、本当にありがとうございます」

二人は互いに、深々と頭を下げた。

父はそっと腕をほどき、瑠璃の手を一生に託す。

「幸せにな、瑠璃」
「ありがとう、お父様」

涙を堪えながら声を震わせてそう言う娘に、父は優しく頷いた。
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