魔法のいらないシンデレラ
和樹と二人きりになった瑠璃は、なんとなく落ち着かない気分になった。

「ほら、乾杯しようぜ」

スパークリングワインが注がれたグラスを、二人でカチンと合わせる。

「メリークリスマス!」

和樹は上機嫌だった。

ワインを飲むペースも速く、次第に饒舌になっていく。

「うまいよなー、酒も料理も。大変だったんだぜ?クリスマス・イブに部屋押さえるの。なんたって超人気のホテルだからな、ここは」

確かにお料理はどれもこれもとても美味しい。

けれど瑠璃は、だんだん不安になってきた。

(この部屋を押さえてあるの?それって…)

「どうした?瑠璃ももっと飲めよ」
「あ、ううん。私はもう大丈夫」
「なんだよ?せっかく高い酒用意したのに。しかもその仏頂面。なんか文句でもあるのかよ?」

責めるような和樹の口調に、瑠璃はドキリとして胸を押さえる。

「違うわ!そういう訳じゃ…」
「じゃあ何だって言うんだよ?俺がこの日のためにあれこれ用意してやったのに、ちっとも嬉しくないのかよ?」
「あ、それは、その…嬉しく思ってます。こんなすてきなホテルに美味しいお料理も、どうもありがとう」

そのことには素直に頭を下げる。

和樹は、ようやく機嫌が直ったらしく、ふっと笑って再び食事の手を進めた。
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