魔法のいらないシンデレラ
「あ、あの、すみません、わ、私…」

焦ってしどろもどろになる瑠璃ににっこり笑いかけて、男性は立ち上がった。

「おはようございます。よく眠れましたか?」
「は、はい!もうぐっすり」
「それは良かった。これから朝食を用意致します」

え、あ、あの…、と引き止める瑠璃に構わず、男性はどこかに電話をかける。

その横顔を見ているうちに、瑠璃はこの人とどこかで会ったことがあるような気がしてきた。

「どうぞ、そちらのソファにおかけください」

受話器を置いたあと、瑠璃に近づいて来てソファへとうながす。

近くで見ると、とても背が高い。

その瞬間、瑠璃は思い出した。

(あ!この方、この間ロビーで助けてくれたスタッフの方だわ)

瑠璃は慌てて頭を下げた。

「あの、先日はロビーで助けて頂き、ありがとうございました。本当に助かりました」
「いえ。こちらこそ、いつも当ホテルをご利用頂き、ありがとうございます」
「え…いつも?」
「はい。先週に続き、同窓会でもお越し頂きましたよね。そして昨日も」
「え、は、はい」

なぜそんなに詳しいのだろう。

そう言えば、和樹と知り合いのようだったけれど、それにしても同窓会のことまで知っているなんて…

瑠璃が考え込んでいると、男性はデスクの後ろに回り、棚から何かの箱を取り出した。

戻って来ると、手にしたそれを瑠璃に差し出す。
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