魔法のいらないシンデレラ
食事のあとは、和樹の部屋で二人でコーヒーを飲むのがいつもの流れだった。

和樹に続いて2階に上がり、二人きりになると、ドサッとソファに座った和樹が、はあーと大きく息を吐いた。

「相変わらずだなー、親父もおふくろも。こっちのことなんて、なーんにも気づいちゃいない」

何と答えていいか分からず、瑠璃は黙って向かいの席に腰を下ろす。

少しの沈黙のあと、和樹がもう一度ため息をついた。

「そんなしけた顔するなよ。年明け早々」
「ごめんなさい」

笑顔にはなれそうもなく、瑠璃はうつむいたまま謝る。

「いや、ああ…そうじゃなくて。悪いのは俺なんだよな」

意外な言葉に、瑠璃は少し驚いて目線を上げる。

背もたれから体を起こした和樹は、何かを考えるように、ゆっくりと口を開いた。

「瑠璃、今までごめん。悪かった」
「えっ…」
「俺さ、必死だったんだよ。瑠璃をつなぎ止めたくて。俺から離れていかないように、何とかして俺に気持ちを向かせようとして。なりふり構わず強引な態度だったと思う。本当にごめん」
「和樹さん…」

瑠璃は驚いたまま、頭を下げる和樹を見つめる。

「本当はきちんと告白するべきだったんだ。つき合ってくださいって。でも振られることが怖くて出来なかった」

そこまで言ってふと考え込む。

「…てことは、自分でも分かってたってことだよな。瑠璃は俺とつき合う気なんかないってこと」

和樹は、ははっと自嘲気味に笑う。
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