魔法のいらないシンデレラ
女将に案内されて、窓から庭園を望める個室に通される。

腰を下ろしてすぐに、瑠璃は庭園に目を奪われた。

「すてきなお庭ですね。きれいにお手入れされていて。それに冬なのに、色々なお花が咲いているのですね」

それを聞いて、女将は嬉しそうに頷いた。

「ありがとうございます。この庭園に入れるのは、当店をご利用頂いたお客様だけなのです」
「まあ、そうなのですね。だからこんなにも、静かで落ち着いた雰囲気なのですね」
「ええ。お食事のあとに、どうぞご自由にご覧ください。今の時期は、椿や梅も見頃を迎えています」
「それは楽しみです」

そんな女将と瑠璃の会話を、にこやかに聞いていた佐知が口を開く。

「まあ、瑠璃ちゃんは本当に品のあるお嬢さんね。でも私は花より団子、そろそろお食事を頂いてもいいかしら?」

女将と瑠璃は、顔を見合わせて笑った。
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