魔法のいらないシンデレラ
「本当に。我ながら良く撮れていると思います」
「あら、モデルさんがいいからよ」
「ええ。おっしゃる通りです」

カメラマンが、参ったというように頭を下げると、佐知はおもしろそうに笑った。

「それでこの写真、応募なさるの?その、コンテストとやらに」
「はい。そちらのお嬢さんさえよければ」

急に二人が振り返り、瑠璃は慌てる。

「え?あ、私?」
「どう?瑠璃ちゃん。困るかしら?」
「え、いえ、そういう訳では…」

さっき見せてもらった画面では、瑠璃の顔は斜めうしろから撮られていて、誰だかはよく分からないだろう。

「では、応募してもよろしいでしょうか?」

恐る恐る聞いてくるカメラマンに、瑠璃は戸惑いながらも頷いた。

「はい。応募されるだけなら、大丈夫です」

カメラマンは、ぱっと顔を輝かせた。

「ありがとうございます!」

嬉しそうな笑顔を見ていると、なんだか良いことをしたようで、瑠璃まで嬉しくなって微笑んだ。

それがのちにどんなことになるかは、その時の瑠璃は想像もしていなかった。
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