魔法のいらないシンデレラ
「なになに…テーマは【ホテルを彩る冬の装い】応募資格はプロ・アマ問わず。最優秀賞はエグゼクティブスイート、ペア宿泊券ですって。あら、表彰式まであるのね」

ホテルの1階にあるロビーラウンジ。

テーブルに置いたフォトコンテストの応募要項に、佐知は熱心に目を通す。

庭園でカメラマンと別れたあと、お茶でも飲みましょうかと佐知が言い、ロビーを通った時に、このコンテストのちらしが置かれているのに気づいて1枚もらってきたのだ。

「なかなか本格的ね。審査員もプロの写真家みたいだし」

瑠璃もちらしをのぞき込んだ。

応募用紙には、
カメラデータ…絞り、シャッタースピード
などの記入欄もあり、瑠璃には何のことやらさっぱり分からない。

「結果発表は2月21日ですって。あの方、最優秀賞取れるかしら?瑠璃ちゃんがモデルさんだものね。取って頂かないと」
「おば様、そんな…」

瑠璃が苦笑いすると、佐知は真顔で続けた。

「何なら、もう何ポーズか撮ってもらえば良かったわね」

瑠璃は飲んでいた紅茶で思わず咳き込んでしまった。

「あら、大丈夫?」
「え、ええ。だ、大丈夫です」

口元にハンカチを当てながら、瑠璃は、ふうと息を吐いた。
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