魔法のいらないシンデレラ
第十章 モデル
3月の半ばから、いよいよ臨月に入った姉の藍が、出産までを実家で過ごすことになった。

夫の高志も、時間がある時には実家に顔を出して、皆で夕食を囲む。

ある日、夕食後にソファでコーヒーを飲んでいた高志に、瑠璃は声をかけた。

「お義兄さん、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「なに?瑠璃ちゃん」

そう言って優しい笑顔を向けてくれる。

姉と母は、ダイニングテーブルでお茶を飲みながら、出産グッズのカタログを見ていた。

瑠璃は、高志の向かい側に腰を下ろす。

「あの…今仕事を探しているんだけど、色々迷ってて…」
「仕事?」

少し考えるような仕草をした高志は、ああ、と思い出したように頷いた。

「瑠璃ちゃん、今月末で契約期間終わるんだってね。でも藍は、新しく仕事探す必要ないって言ってたけど?」
「あ、ええ。姉さんはそう思ってるみたいだけど…」

なんとなく言葉を濁すと、高志は何か察したように、話を変えた。
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