魔法のいらないシンデレラ
玄関で佐知に出迎えられ、お邪魔しますと言いながらリビングに入り、ソファに座る和樹の父に挨拶をした途端、瑠璃は手にしていたバッグをドサッと落としてしまった。

「こ、こ、これ…」

ソファの横に飾られた写真…

まるで絵画のような、高級な額縁に入れられたその写真は、紛れもなく古谷のあの作品だった。

そしてサイズが、とてつもなく大きく引き伸ばされている。

「やあ、瑠璃ちゃん。いらっしゃい。この写真、瑠璃ちゃんなんだってねえ。よく撮れてるね」
「あの、いえ、まさか、こんなところに、こんな大きく…」

口をパクパクさせる瑠璃に、佐知が自慢げに言う。

「いいでしょう?これ。古谷さんにデータを送って頂いたのよ」
「こ、こんなサイズで、リビングに…あの、ご迷惑では?」

すると和樹の父が、いやいやと手を振る。

「素晴らしい作品だよ。私も毎日ふと目にするのが楽しいんだ」

嫌でも目に入る、という和樹のセリフを思い出した。

これは確かにそうだろう。

「さあさあ、瑠璃ちゃん。ソファに座って」
「は、はい」

まだ半分、写真に意識を奪われながら、なんとか腰を落ち着ける。
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