魔法のいらないシンデレラ
「私にとって、ホテルでの四季を感じる和の写真は、あの作品を置いては考えられません。青木様にもそうお伝えしたところ、ぜひパンフレットにあの作品も採用したいとのことでした。そしてさらに何枚か、瑠璃様をモデルとしたホテルの写真を撮影したいとおっしゃっていました」

(ええー?!なんてこと)

瑠璃は思わず、頬を両手で押さえる。

「つきましては、瑠璃様にもご検討頂きたく、一度私と共に、青木様との打ち合わせにご同席願えないかと、不躾ながらメールさせて頂いた次第です。その際には、もちろん澤山様にもお越し頂ければ幸いです。何卒、ご検討の程よろしくお願い致します。…だってさ」

和樹の父が、腕組みしながらソファに背を預ける。

「なるほどねえ。仕事柄、私も色々なホテルのパンフレットを目にするのが、確かにあそこのホテルは、なんて言うかお堅いイメージだな。敷居が高い感じがする」
「他のホテルは、カップルとかファミリー向けに人物入れて撮ってるものが多いけど、一生のとこは、由緒正しいホテルだからな」

和樹の言葉に父も頷く。

「昔からのお客様には、古き良きホテルの伝統を守って欲しい思いがあるのだろうな。かと言って、新規のお客様を見込めなければ、一生くんのホテルと言えど経営も危うくなる」
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