魔法のいらないシンデレラ
ふと、壁の写真に目を向けてから、和樹の父は続けた。

「こういう写真ならいいだろうね。人物を入れても格式の高さがうかがえる。そしてこういう雰囲気に憧れて、同じような写真を撮りに行きたくもなる。SNSで映える写真をね。つまり、今の若い人達をターゲットに出来る」

終始頷きながら、じっと話を聞いていた佐知が、笑顔で皆を見渡した。

「そうでしょう?いいお話よね。どう?瑠璃ちゃん」

三人が一斉に瑠璃を見る。

「あ、いや、ええ。そう…ですね」

ここまでの話の流れからすると、もう首を縦に振るしかなかった。

「じゃあ、古谷さんとホテルの打ち合わせに行きましょうか。瑠璃ちゃんは、土日がいいわよね?連絡しておくわね」

「は、はい。よろしくお願いします」

瑠璃は、戸惑いつつも頭を下げた。
< 72 / 232 >

この作品をシェア

pagetop